

相場戦略研究所
政策進展への評価、焦点は年末に向けての実現度
日本株:意外に多い政策進展への評価、焦点は年末に向けての実現度 (ブルームバーグ)
2002年10月31日(木)12時42分
東京 10月31日(ブルームバーグ):構造改革の先送りか、それとも当面の金融システム不安の解消か――。政府の総合デフレ対策の決定を受けた31日午前の東京株式相場は、先物主導で軟調な動きが続いた。市場の一部では、改革色の後退で海外投資家が「変われない日本」との評価から、日本株売りの姿勢を強めることに警戒感は根強いものの、一方では、1カ月あまりで政策の骨格がまとまったことを率直に評価する声も出ている。デフレ対策は今後、年末に向けて来年度予算編成、税制改正討議のなかで具体化していくため、投資家の判断も先送りせざるを得ない状況にあるようだ。
政府・与党が30日に決定した総合デフレ対策には、銀行の不良債権処理を加速させるために、資産査定の厳格化を通じて銀行に公的資金を再注入する可能性や、再生可能な企業の救済機関となる「産業再生機構」の創設など、金融・産業の早期再生案を盛り込んだ。 ただ、不良債権処理のハードランディングシナリオの象徴的存在で、焦点となっていた税効果会計(将来見込まれる税金還付分を自己資本に積み増す会計処理方法)の見直し時期については、与党、銀行側の猛烈な反発もあって、明記されずに事実上先送りされた。
税効果会計の見直しに関しては、資産査定の厳格化より先に公的資金注入ありきの議論と、政策の行き過ぎを警戒する声も聞かれる。ただ一方で、政策の骨抜き、先送りに飽きた海外勢が日本売りに出ることへの懸念も強く、一部報道を通じて税効果会計見直しの先送りの可能性が高まった30日の段階で、市場では「注目は海外勢の動向。竹中大臣というより、アドバルーンだけ上げ、中身の実施が一向にできないという小泉政権に対し、高い確率で失望してくるのではないか。あす以降の相場は警戒される」(コスモ証券・佐藤博商品部長)との指摘が出ていた。
米大手証券のソロモン・スミス・バーニーは今月中旬、金融問題解決に伴うデフレ進行の可能性に対し、リフレ政策(不況下で生産活動が停滞している時に、利下げや財政支出拡大で景気拡大を図る政策)の説明が不十分として、推奨ポートフォリオに占める日本株の組み入れ比率を従来の10.7%から4.6%に引き下げており、こうした動きも投資家の不安感を強めさせる背景にあったようだ。 ただ、この日朝方の外資系証券12社経由の注文状況は、売り越し額が前日の1110万株から110万株に急減しており、ひとまずこうした海外勢売りに対する過度の警戒感はやや影を潜める格好となっている。
方向性の明確化を評価
エスジー山一アセットマネジメントの吉野晶雄投資調査部長は、今回の総合デフレ対策について「どっちつかず、力不足などと批判の声はあるが、政策が迷走するリスクが後退したことはポジティブに受け止める。これまでは政府、与党、金融庁、日本銀行、銀行がそれぞれ違う方向を向き、考えに濃淡があった。その落としどころが決まり、日銀の追加金融緩和に表れるように、各者の役割分断がはっきりしたわけで、9月期末の株安をきっかけに1カ月あまりで決まったことは、日本にしては大躍進」との見方を示している。
また、野村証券金融研究所の若生寿一ストラテジストも「政府・日銀が一体となって政策対応をするのかどうかということへの懸念が払しょくされたという意味で、今回の対応を評価したい。政府と日銀が同調したこと、及び政策の不透明感が薄れたことで、企業収益に注目する環境が一段と整った」と指摘。 東海東京調査センターの中井裕幸投資調査部長は「総合デフレ対策は60点。小泉流落としどころ、三方一両損的スタイルで落ち着いた。資産査定厳格化の時期明示なし、補正予算の明示なし、しかし産業再生機構創設、日銀の金融緩和でプラスが残る」とみるなど、意外にも好意的に受け止める向きも少なくはないようだ。
しかし、彼らの指摘に共通している部分は、政策評価について「内容がいいか悪いかは別」(吉野氏)、「内容はともかく」(若生氏)といったフレーズが含まれている点である。若生氏は、産業再生や税制改革、セーフティーネットなど「予算措置を必要とする項目が明確になったことで、年末の来年度予算編成と合わせて、今年度補正予算が編成されることは確定した。今後、1カ月半程度の間に、こうした項目の肉付けがなされていこう」と強調。 また、クレディスイスファーストボストン証券の市川眞一ストラテジストは「核となる金融再生プログラムについて、迫力には欠けるものの、基本的なスタンスは不良債権処理に向けた重要なステップとして評価する。ただし、実効性を担保する上では、同プログラムの運用面に多くが託された」とし、政策に対する評価は12月まで先送りすべきとの認識を示している。
東京 院去 信太郎 Shintaro Inkyo
