

相場戦略研究所
証券税制改革とその効果 長谷川慶太郎
証券税制改革とその効果
2002.12.13更新 (毎週更新)
配当課税が決定的
前週の13日自民党税調が、平成15年度の「税制改革大綱」を決定した。そのなかには、法人税減税の一方、個人所得税は実質的に増税であり、更に大きい問題としてはいよいよ証券税制の大改革が導入されることになった。その背景にはインフレ時代に適していた「間接金融制度」をデフレ時代に必要な「直接金融制度」に改革しないと、日本経済の本格的な合理化は一歩も進まないとの大局的な判断が、こうした抜本的な税制改革を決断させたのである。
預貯金より有利な税制へ
今日本に存在する「個人貯蓄」は1400兆円といわれ、その内証券投資に回っているのは、僅か7.5%と世界の先進国の中では最低の水準である。一方預貯金には50%を上回る金額が貯まっている。その理由は株式投資よりも預貯金が遥かに有利となる税制が、長年執行されていたためである。一見双方とも利子、配当とも源泉分離20%の課税であり、平等に扱われているかに見える。だが、実際は1件5万円以上の配当は必ず源泉徴収の付箋が税務署に回り、配当を受け取った株主はその収入を確定申告しなければならない。その結果配当に対する実質課税は高額所得者の場合50%にも達することが少なくない。預貯金の場合は源泉分離の課税20%だけで総合課税に算入する必要がないことから、実質課税は額面の20%以上にはならない仕組みである。これを逆転させて実質的な配当課税を預貯金利子課税よりも有利にしようというのである。
改正のポイント
今度の改正のポイントは、配当課税を源泉分離10%とし、配当受領者はそのまま申告して源泉分離課税を個人所得に算入するか、あるいは一切申告することなく源泉分離課税10%だけとするか選択できることになった。これは、極めて大きい個人投資家に対する優遇措置である。投資家の最も強く嫌うのはどんな種類の所得であれ、その内容が税務署に知られることである。だから今の超低金利でも預貯金から証券投資に資産を移動させようとしない。この改革で初めて個人投資家は配当所得を税務署に知られることなく株式投資が可能となったのである。となれば、今の超低金利しかとれない預貯金よりも遥かに高い利回りになる株式投資に、自分の預貯金を移そうとする動きが始まるに違いない。これが既に挙げた金融市場の構造を「金融機関」中心の「間接金融方式」から、資金を必要とする一般企業が株式、社債を自ら発行して、それを個人投資家に販売して資金を調達する「直接金融方式」への移行なのである。
重視される配当利回り
となれば証券市場でどういう銘柄が投資対象として選択されるか、投資家にとって最も重要な課題に自ずと回答が寄せられる。まず配当利回りの高低である。いまの基準となるのは、恐らく3%の水準である。というのも最も知名度が高く、かつ大型銘柄である「電力株」の配当利回りがほぼ3%だからである。従ってこの水準を基準にまず銘柄を選別し、次いで経営内容を分析して、景気の変動の影響を殆ど受けない防衛的な性格を確認して投資すれば、まず大きい危険を回避できるだけでなく、低金利時代が長期化しても一向に影響を受けない安定した資産運用の体制を作ることが出来る。こうした株式投資の戦略をとるなら、多少の株式相場の変動などに一喜一憂する必要は全くない。こういう極めて保守的な資産運用が可能になれば、日本の金融市場の構造改革は比較的短期間に確実に実現するに違いない。小泉政権は漸くこうした税制改革に踏み切って、金融市場の全面的な改革に乗り出したのである。
