

相場戦略研究所
動き出した証券税制改革 長谷川慶太郎
2002.11.29更新 (毎週更新)
本格的、全面的に
自民党税調は証券税制の本格的な改革を実現する方向に、内部の論議を推進する雰囲気が支配的になった。
その背景には証券市場の危機が一段と深刻化し、そこからの脱出を図る必要に迫られているにもかかわらず、大量に発生する金融機関からの現物売りに対し、その受け皿となる買い手は個人投資家しかない為、彼らの投資意欲を刺激するのに必要な制度の整備の中心となる「証券税制」の全面的な改革が、何よりも重要な課題になったと言う事情がある。もしこの課題の解決に失敗すれば、景気回復の中心的な課題とも言うべき「不良債権」の処理も不可能になる恐れが十分ある。
絶対に実現を要す
それだけいまの経済情勢は深刻な様相を見せているのであり、自民党税調としても必死の思いで証券税制の本格的な改革に取り組む姿勢にある。
もともと証券税制の改革を考える際に決定的な重要性は、金融制度との絡みである。長年日本の金融制度はインフレ時代に対応する「間接金融方式」が中心だった。一般国民の貯蓄を一旦金融機関に集め金融機関を通じて企業に貸し出す方式が、今日まで続いている。だが、デフレが本格的に定着し始めた現在、間接金融方式は経済活動に適さないだけでなく、寧ろ安定した運営を阻害する事態を迎えた。
今経済に必要な金融制度は民間企業が発行する株式、社債と言った証券を通じる「直接金融方式」への制度改革である。この制度改革を実現するには、証券投資が預貯金よりも有利になる税制が不可欠である。それも早急な実現が絶対に必要である。
差別の廃止が必要
とくに必要な制度改革は、配当課税である。現行の配当支払い企業に課せられる源泉分離課税20%に加え、個人投資家には一定金額以上の配当を受け取る場合、更に総合課税の対象になる。
預貯金の金利は源泉分離課税20%で全てが終わり、総合課税の対象にならないのに比較して著しい不利な扱いになっていた。それを一挙に源泉分離課税10%とし、個人の選択により総合課税の対象にしないで済むことになる。
いまの情勢ではあまり問題にならないが、証券の売買益課税も一律10%を課税し、申告を要しない分離課税にする。こうした税制改革が実現すれば、個人投資家は金融機関に預金するよりも、証券投資に保有する資金を振り向けるに違いない。それが金融制度を間接金融から直接金融に転換させる決定的な政策の転換になるのは確実である。また同じ証券投資に対する課税が、法人と個人との間に存在する著しい格差の解消も必要である。
市場への影響
自民党税調の税制改革がまとまれば、それはほぼ実現したのに等しい。政権を握る与党と言うだけでなく、一旦自民党税調が決定する税制改革は国会で多数を握る以上、与党の意向が通ると見て間違いない。
改革のなかで最も重要な配当課税が実現すれば、個人投資家は税引き後の配当の増加に期待をかけて投資活動を展開するに違いない。それは配当利回りの高い銘柄が投資対象に選択されることでもある。具体的な銘柄選択に与える影響は決して無視できるものではない。
恐らく電力を中心に高配当利回り銘柄が個人投資家の興味を集める情勢が生まれると見てよいだろう。この他にもあまり関心を集めなかった銘柄の中のおいて、配当利回りの水準次第で個人投資家の投資意欲を引き付ける要素が備われば、逆に企業経営者に配当利回りを引き上げる努力を強めることになり、自社の資金調達の難易が左右される情勢が生まれることとなり、金融機関に依存してきた資金調達自体も大きく改革されるに違いない。証券税制の改革に強い刺激効果を与えると言えるだろう。
