

相場戦略研究所
新安値とその意味 長谷川慶太郎
新安値とその意味
2002.11.15更新 (毎週更新)
底値確認の判断
前週ついに日経平均は、バブル崩壊後の新安値を更新した。一部の悲観論者が主張していた予測が的中した形であり、更に一段安を予測する向きが力を増している印象は免れない。その一方、こうした危機に対応しようとする動きも、強まってきただけでなく、小泉政権としてもこうした株安を放置出来ないとして、思い切った制度改革に踏み出す動きが本格化し始めた。こうした動きから言うなら、このあたりが底値との判断が強まっている。
危機感の政界
株安の影響はまず政界に及び始めている。例年税制改正に取り組むべき時期とされる11月に入って、自民党税制調査会(党税調)は大きく影響したとされる証券税制の全面的改正に取り組む姿勢を明示し、この税制改正を導入することで証券市場に新規資金の導入できる条件を整備しようとしている。また所管の金融庁も証券税制の改正に動き始め、税率の一律10%への引き下げ、配当課税の源泉分離10%一本化、平成15年度から導入予定の「申告分離課税」を一応停止、従来の「源泉分離課税」方式と平行すると言った改正案を提案している。この改正案は既に所管の財務省とも調整の上で発表されたものとされ、意外に実現の可能性が高いと伝えられている。
デフレ対策も税制中心
10月30日小泉政権が発表した「デフレ総合対策」でも、金融機関の抱える不良債権の処理を実施する一方、これに伴い一般経済界に生ずる痛みに対する方策として法人税を中心に「減税」が導入される方式が採用された。いまの経済の基調となっているのは、世界的なデフレとの認識が小泉政権を支配しているため、伝統的な景気対策は一切導入されず、不況対策は専ら税制改革中心とされる。もちろんこうした経済政策運営に自民党内から反発が生じているが、小泉首相は一顧だにすることなく所信を貫く姿勢に何の変化も見せようとしない。株価対策も全く変わりがない。今までの手法とは違って自由経済の運営に必要な政策とは、主として税制の改正しかないというのが小泉政権の経済政策運営の基本なのである。証券市場の再活性化にも証券税制の改正しか対応の方策はないのである。
効果は遅いが有効
今の証券危機の原因は、極めて多くの要因が重なったものであり、それを一挙に「快刀乱麻を絶つ」ように全ての問題点を解決できる対策などありはしない。証券市場の魅力が低下した理由、とくに将来金融市場の基本体制にならざるを得ない「直接金融制度」を成立させる前提は、証券市場に巨額の個人金融資産を吸引するだけの魅力を回復させる状況を作ることしかない。いままでの証券市場は個人投資家にとってあまりに不利な投資環境しか提供して来なかった。とくに証券税制面でその不利が目立っていたのを本格的に改革しないと個人投資家が証券投資に動くわけがない。この点に漸く改革のメスが入ろうというのである。
高利回り銘柄が有利
いま論じられている税制改革案の中で最も成立し易い案は、既に挙げた「金融庁案」である。その中で最も注目されるのは配当課税の改正である。いまの税制では配当を支払う企業が、20%の源泉課税を受け、受け取った株主は所得の水準によってその内5%あるいは10%だけを他の所得に対する課税から控除を受ける。法人株主なら源泉課税の全額を法人税から控除できるのに対し極めて不利な扱いである。これを源泉課税10%だけとし、個人、法人を問わずそれ以上の課税対象としないと言う改正である。この課税が実現すれば、高額所得者に有利な改正というのに加えて、高利回りの銘柄が著しく有利になる。電力など高利回り銘柄が改めて注目されるに違いない。
