

相場戦略研究所
遂に動き出した株価対策 長谷川慶太郎
日銀の株買い上げへ
前週18日の日銀政策委員会で、大手銀行の持つ株式を直接日銀が買い取る方向で方策を検討すると決定した。その総額は最低1兆円であり、さらに日銀の保有する期間は、10年を上回るとの見通しを速水日銀総裁が記者会見で述べている。
この日銀による大規模な株式の直接買い上げは、ようやく本格的な株価対策に金融当局が動き出した証拠と言える。まだ事務的につめなければならない部分が多く残っているため、いつから発動されるかはまだ不透明である。それにしても、ようやく株価対策に動き出したのは間違いない。
40年不況との違い
かつて日銀は株価対策を実施したことがある。昭和40年の不況がそれである。当時は日銀が直接株を買い上げるのではなく、まず日本共同証券、次に証券保有組合を設立して、当時ダウ1,200円を割り込む事態を避けるため、連日証券市場で株を買い、それに必要な資金は全て日銀が供給した。
不況が終わるとともに株価が回復し、この二社が保有していた株は大幅に値上がりし、結果として日銀は巨額の差益を確保できた。その経験はいまも生きているが、前回と今回との間には大きい違いがある。当時はまだインフレ時代であり、日本は右肩上がりの高度成長の最中にあった。今度は世界的なデフレが定着する過程にあり、日本経済自体もその強い影響を受け、あらゆる価格の連続して右肩下がりの続く情勢の下にある。折角日銀が買い上げた株が 何時までたっても値下がりし続けるリスクは極めて大きい。「柳の下にドジョウが二匹いる保障はどこにもない。」
金融危機の深刻さ
今回の株買い上げの目的は、銀行の保有する株のうち、どうしても市場に放出せざるを得ない7兆円を対象にし、その株が市場に放出されて株価を一段と押し下げる状態を避けるのが、今回の目的である。既に銀行は株価の値下がりで大打撃を蒙っている。
銀行の持ち株は自己資本の額以下に抑制することになっている。
その自己資本は保有する株価の低落とともに生ずる値下がり損で毀損され、それが株式の保有額を削減しなければならない規制の影響で、市場で売りに出せば株価が一段と値下がりしてさらに自己資本の減少が続くという一種の悪循環に直面している。
この悪循環を断ち切るため、今度の新路線が案出されたが、この処置は日銀のリスク負担で当面の銀行の経営危機を回避しようというのである。それだけ金融業界の直面している危機は深刻である。
金融政策の転換
日本の金融危機の深刻さは、もちろん政府当局も十分承知している。先日小泉首相が米国を訪問したとき、米国政府当局から厳しい指摘を受け、早急に日本の金融危機を解消する努力を求められた。
とくに金融市場の機能を著しく阻害している、「不良債権」の処理を急ぐ必要を痛感して帰国した。それ以前に銀行の経理を強く圧迫している保有株式の処理をまず急がないと、銀行が「不良債権」の処理に乗り出すことなど、到底手の届かないことを認識して、まずその対応に全力をあげて取り組む必要があると判断し、今回の措置に踏み切ったのである。
公的資金を大量に金融業界に投入して一挙に不良債権を処理しようにも、金融機関の経営者が経営責任を感じていないなら、こういうオーソドックスな措置は効果がない。
金融業界の無責任ぶり
日本の銀行業界では、経営者が全員安全なサラリーマンで占められている。その結果自行の経営危機に直面しても、自ら経営責任をとって断乎とした行動に出ることはない。まして自らの経営責任をとろうとする経営者は、全くと言っても良いほど業界に存在しなかったと言っても差し支えはない。
と言ってもいまさらどうすることも出来ない。可能な範囲で打つ手を考えるしかない。業界全体に広がっている無責任ムードは、一朝一夕に解決するはずは無い。とすれば、理屈に合わないとしても少しでも事態の改善に繋がる政策を導入するしか、打つ手は無いと自覚するしかない、今度の日銀の新政策も大きい成果が一挙に期待できるわけはない。それでもやらないよりもましと言うことしかないのである。
